エアコンや石油ストーブとは一味違う魅力のある薪ストーブ。ゆらめく炎を眺めながら暖を取る姿に憧れ、家づくりの最中に薪ストーブを置きたいと考える方も多くいらっしゃいます。
そんな薪ストーブですが、導入は決して簡単ではなく、設計上のポイントや注意点があります。
今回はそんな薪ストーブの魅力や設計のポイントについて、設計士の立場から解説していきます。
薪ストーブのある家の魅力
薪ストーブを入れたいと思う理由は人それぞれですが、大きく分けると3つの要素があります。
心地よい暖かさ
暖房家電では味わえない炎のゆらめきや暖かさは、薪ストーブ特有の大きな魅力です。
揺れる炎は「1/fゆらぎ」とも言われ、自然に発生する規則性と不規則性が調和した動きにはリラックス効果があるとされています。
熱源としても輻射熱によって家自体が暖まるような感覚があり、薪ストーブの周りに自然と家族が集まってしまうような魅力があります。
薪割りや料理、生活に根ざす道具
薪ストーブは単なる暖房器具ではなく、ライフスタイルにも魅力が詰まっています。
山に入り薪を集め、薪割りで汗をかき、火を入れた薪ストーブの上で暖かい料理を作り、夜はゆっくりとした時間を過ごす。
手間がかかりますが、その手間さえも愛おしくなるような、生活の一部になる唯一の道具が薪ストーブです。
便利に発展した現代だからこそ、アナログで面倒な薪ストーブに魅力を感じるという人も少なくないでしょう。
存在感のあるデザイン
薪ストーブが持つ重厚な雰囲気、インテリアとしての美しさも大きな魅力です。
レトロなものやモダンなデザインなど、現代では様々な薪ストーブがありますが、どれも大きな存在感があり、家の印象を大きく変える力があります。
暖房器具としてだけでなく、品の良いインテリアにもなるというのも薪ストーブの魅力でしょう。
薪ストーブは後付けより設計段階での導入がおすすめ
既存の家に薪ストーブを導入したいという方もいらっしゃるでしょうが、アーキラボとしてはできるだけ設計段階=新築での導入をおすすめしています。
その理由について解説していきます。
設計・施工の難しさ
薪ストーブは本体の配置、煙突の動線など設計・施工の面で考慮すべき点が多くあります。
煙突においては、隣家との距離や窓の配置、排気効率などの面から、できるだけまっすぐ高く天井へ出すのが理想です。
しかし既存住宅で理想通りに煙突を出せることは稀で、大抵は壁から煙突を出し、屋外で上へ伸ばしていくようなかたちになります。
風向きや部屋、隣家との位置を考えながら煙突の経路を確保しなければなりませんし、壁に穴を空けるので断熱、耐震性能にも気を使います。
こういった多くの要素から、薪ストーブはエアコンと比べて遥かに設置位置にシビアです。
後付けの場合どうしてもどこか妥協せざるを得ない部分が出てくるため、なるべく新築や建て替えのタイミングでの導入をおすすめしています。
床の補強
機種や条件にもよりますが、薪ストーブは本体が100kg〜200kgほど。
炉台や炉壁、室内に置く薪も含めると薪ストーブ周辺だけで800kg以上の重さになる場合もあります。
既存住宅がこの重量に耐えられる設計になっているかは分からないため、導入前に基礎の調査をして、不十分な場合は基礎や床の補強が必要になります。
古い家の場合基礎が傷んでいたり、そもそも現代の建築基準を満たしていない場合もあります。
決して安いとは言えない追加費用の可能性があるため、薪ストーブの後入れには注意が必要です。
間取りや面積
薪ストーブは本体のサイズも発生する熱量も大きく、設置場所や部屋面積、家具の配置などはよく考える必要があります。
家具の配置はもちろん変わるでしょうが、コンセントや窓の位置はそうもいきません。
あれだけの大きさのものを新たに設置し、周囲に物を置くことはできなくなるため、よっぽどリビングに空間が余っている家でもない限り後入れはなかなか大変です。
やはり設計段階で薪ストーブの配置を盛り込んだほうが圧倒的に使いやすく満足できるので、設計段階での導入をおすすめします。
薪ストーブのある家を設計するポイント
ここまで薪ストーブの魅力と後入れをおすすめしない理由を解説してきましたが、新築での導入にも設計のポイントがいくつかあります。
ひとつずつ解説していきます。
機種は設計段階で決めておく
薪ストーブの機種は設計段階で決めておく必要があります。
一口に「薪ストーブ」といっても機種によって特徴が異なり、設計もそれに合わせて変化するからです。
例えば、暖房方式には「輻射式」「対流式」の2種類があり、暖め方に合わせた設計が必要になります。
また、薪ストーブ本体が熱を持つタイプの薪ストーブであれば土間を作る、炉壁や遮熱板を入れるといった設計が必要ですが、ガラス面からのみ熱を発するような薪ストーブの場合、そこまでシビアな熱対策は必要ありません。
機種選びは事前に決めて、設計士に伝えてから設計に入るようにしましょう。
アーキラボの場合、機種選びからお手伝いすることもできるので、気軽にご相談ください。
壁で仕切りすぎない
薪ストーブは1台で広範囲を暖めることができるため、できるだけ壁で仕切りすぎない設計にします。
具体的には、LDKは一体にする、廊下を作らず部屋自体を広く取るなど、大空間にします。
家全体が開放的になり、採光も取りやすくなるメリットもあります。
吹き抜け
大空間にするのと同時に、吹き抜けの採用もおすすめです。
薪ストーブの暖気が上がり、自然と2階まで暖まるようになります。
シーリングファンやサーキュレーターがあると、より効率よく暖気を巡らせることができるので、こちらもおすすめです。
断熱・気密性能
一度暖めたらずっと快適に過ごせるように、断熱・気密性能にはこだわって設計しましょう。
家の性能が低くては、せっかく薪ストーブがあっても暖めたそばから暖気が逃げてしまいます。
自然と薪の消費量も減るので、ランニングコストの負担軽減にもなり、温度変化がゆるやかになるので体感の心地よさもより良くなります。
アーキラボの場合は、HET20 G2クラスの性能を推奨しています。
設置場所と動線
重い薪を運ぶたびに移動が手間になっていくと、どうしても薪ストーブを使うのが億劫になってしまいます。
薪割りをする場所と薪棚。そこから薪を運び込む室内の薪置場から薪ストーブまでのスムーズな動線は、日々の作業負担に関わる重要な要素です。
暖房効率を考慮した設置位置やメンテナンス性も大切なので、薪ストーブのある家を設計するには、経験と薪ストーブへの理解が重要です。
工務店選びの際は、薪ストーブに造詣の深い、提案力のある会社を選んでください。
デザインの調和
レトロな雰囲気の薪ストーブやモダンなデザインの薪ストーブなど、デザイン性も薪ストーブの魅力。
実利だけでなく雰囲気や所有感も大切な薪ストーブだからこそ、満足できる空間づくりも大切にしていただきたいと思っています。
薪ストーブ本体や煙突は想像以上に大きくスペースを取るため、設置位置はもちろん、シーリングファンや証明、エアコンの位置も考慮する必要があります。
こうするのが正解、という訳ではなく、「自分ならどんな空間で薪ストーブを楽しみたいか」を考えて、工務店に伝えてください。
薪ストーブユーザーの生の声をぜひ聞いてください。
今回は薪ストーブのある家を設計するポイントについて解説しました。
アーキラボは薪ストーブのある家に特化した家づくりを行っており、他者にはない豊富な知識と経験で新潟の薪ストーブライフを支えています。
薪ストーブのある家に住みたい!と思ってる方は、アーキラボのお客様に実際の暮らしをインタビューをしているので、ぜひ読んでみてください。